キューちゃん号で行く春の小川大冒険
"春の小川"。

それは今からほんの98年前、ひとりの国文学者が娘さんと散歩中にみた長閑で優雅な風景だった。そしてそれは時代の流れと共に姿を変え、人々の都合で隠され、そして忘れられようとしていた。少なくとも、1964年(昭和39年)の東京オリンピック開催以降に生まれた世代は、その川を眼にすることはなかった。そしてその中にいたオレはその事実を後年になって知り、春の小川に逢いたいと強く願った。その願いは届き、運良くオレは春の小川の"今"に逢うことが出来た。

.....渋谷川暗渠探索。NHK"熱中時間"に"暗渠熱中人"として出演させて頂いたオレは、スタッフと共に通常なら入れない、暗渠化された河川の中に入るという特別な機会を得た。そして、川を埋め立てたのではなく「蓋をした」という事実をこの眼で確かめ、ようやくその歴史の重みを身を以て知った。
戦争で焼け野原となってから19年後、東京オリンピック開催という国際社会へ躍り出るチャンスを掴んだ日本/東京/渋谷は必死だった。ガイジン様に見られて恥ずかしくない街作り、急激な発展は多くの犠牲をも生み出し、豊かさの代償に多くの尊いものを失った。その中に、小さな谷を流れる、小さな小さな川達があった。
暗渠。
その意味は理解しても、その上を歩いても、実際にそれがどういったものなのかは全て想像によるものでしかなかった。同時に、ある程度美化もしたと思う。が、実際には現代人の都合で汚され、下水道整備に遅れていた東京の丁度良い流路として流用された"ドブ川の末路"でしかなかった。
でも、そこは本当に"春の小川"だったんだ。ほんの98年前まで。

2009年6月、法改正により水路暗渠内の立ち入りは完全に禁止となった。その数ヶ月前に機会に恵まれたオレはきっとラッキーだ。で、オレはその時知った現実を、その時感じた葛藤を、なんとか皆に伝えたい。そこに皆を連れて行ってあげることは出来ないか.....。

行こうか!。
生まれ故郷・渋谷を案内しながら、貴方を春の小川に連れてってあげるよ!。
さ、一緒にキューちゃん号に乗り込んで!。さあ行くゾ!!。

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